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    18

    『雨のはて-Merci and Lalatwo-』


    あの日を忘れない。

    あなたと過ごした14日間は,

    永遠の一瞬となって、

    今もわたしの心の中に生き続ける。


    願いは叶わなかった。

    あのひとには二度と逢えず、

    ひとり、涙に濡れた。


    それでも時は、静かにわたしを癒し、

    優しく包む羽となり、

    いつしかわたしは知った。


    あなたがわたしにくれた、たくさんのたからものを。


    輝く宝石がちりばめられた、

    オルゴールのような、愛しい日々。

    海岸できらめく、銀の砂のような、

    胸のときめき。


    そして・・・この胸をぎゅっと掴んで離さない、

    誰かを想う気持ち。


    それはあたたかで、かけがえのないひかり。


    あなたと過ごした一瞬一瞬が、

    たわわに実り、輝くぶどうとなって、

    わたしの人生を照らし、生かしてくれた。


    あなたはわたし。

    もはやふたつではない。


    あなたは・・・わたしの心のなかで、

    いつまでも消えない明かりとなって、

    すべての終わりを濡らす涙と、

    すべてのはじまりを祝福する、

    喜びを与えてくれたのだ。


    あなたのいない世界では、

    今日も星の雨が降る。


    あまねく願いのほとんどは、

    こうして叶わないままに、消えてゆく。


    それでもあなたに出逢えたことは、

    きっと神さまがくださった、贈り物≪ギフト≫なのだ。


    だから、わたしは今日も祈る。

    あなたがどこかで、生き続けることを。

    ―それは愚かな願いだとわかっているわ。

    けれど、あなたはきっとどこかに存在する―

    ・・・そんな気がして。



    いつか、あなたに言いたいことがあるわ。

    もうすぐ、娘に子どもができるの。

    かわいいわたしの孫。

    名前はもう決まっている。


    ―ララツォ。

    あなたの名前を勝手に借りたら、

    怒られるかもしれないわね。


    ( もう、メルシー!ぼくはもうここにいるでしょ!

      ちゃんとみてよ、ほら―
      
      今さわった。今きみにさわったよ! )




    ―ああ。視界が虹色に染まる。
     


    あなたはもう、こんなところまで、

    迎えにきてくれたのかしら・・・。


    ―ララツォ・・・。

    愛しい、わたしの友だち。


    あなたにみせたいものがあるの。

    このしわくちゃな手に掴んできた、

    幸せの物語を、あなたに教えたい。


    あなたのくれたもの、

    わたしも少しは返せるかしら・・・?





    ―ああ、懐かしい声が聞こえる・・・。




    微笑むと、ひとしずくの雨が、頬を伝った。







    わたしはもう一度、あなたに出逢う。

    まっさらな粉雪のように、

    無垢な子どものまま消えていったあなたは、

    なにものでもない、わたしのはんぶん。



    ―今、わたしは飛び立つ。

    あなたのくれた、

    翼のかたほうを、抱きしめながら。




    ・・・ゆっくりと、記憶が巻き戻る―。




    「はじめまして。ぼくはララツォ。
     
     きみの名前は?」
     

     ・・・



    「ふうん、メルシーっていうんだ。

     それぼくも知ってる。「ありがとう」って意味でしょ!
     
     とってもいい名前だね!」

      
        ・・・・・・


    「ぼく?

     うーん、自分の名前以外覚えてないんだけど・・・
     
     とりあえず、世界の終わりを探して、

     旅をしているところなんだ!

     きっとそこに着いたら、すべてがわかる。

     ・・・そんな気がするんだ。

      
         
    「あっ!そうだ、ねえ―」

     
              
       「よかったら、きみも一緒に行こうよ!」
     

                   
                        ・・・・・・・・・・・・ 







    「・・・うん!わたしも行く!だって・・・。」
     

                   
                                              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




               
        「  ・・・とってもとっても・・・、

            おもしろそうなんだもの!! 」





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    03

    雨のはて-Merci and Lalatwo-

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    「―わかったよ。わかったんだ、メルシー。」

    「なに・・・?どうしたの、ララツォ・・・?」

    メルシーは、ひっく、と泣きながら言った。

    ((僕が、僕自身が「ラヴ」で「フェイト」なんだ―))

    そう言いながらララツォが光に包まれていくのをメルシーはみた。

    愛あるところに、憎しみはある。
    ひとりひとりに「ラヴ」はある。
    ひとりひとりが「ラヴ」であり「フェイト」。

    光の粒がララツォの足を、指を包み込み、ほどいてゆく。

    いやだ、いかないで、とメルシーは言った。

    ぎゅっとつかんだゆびさきの感覚がなくなって、輝く光に消えてゆく。


    “メルシー、僕はね。”

    とうとうすべてが塵のように空に消えてゆく。

    でも、最後のひとことはちゃんと届いた。

    “きみに会いにきたんだよ・・・”

    メルシーは泣いた。わんわんと声にならないおえつを繰り返した。

    確かにララツォはそう言ったのだ。

    そうして、一粒の光もなくなって・・・雨は降った。

    ぽつりぽつり、とメルシーの心のなかに。


    11

    『ネビュラス』

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    ああ。どうかあなたは泣かないで。

    立ち向かうあなたは強いひと。
    だけど、もういいんだよ?


    もう眠ってしまおう?


    大丈夫、もう怖いことは起こらない。

    わたしたちは、ついにたどり着いた。

    最果ての地(ネビュラス)に。


    ここでは、泣かなくても、怒らなくても、嘆かなくてもいい。

    すべてがゼロになって、すべてが満たされる場所。


    ぼくたちは立ち止まってはいけない

    それがあなたの口癖だったけれど。


    わたしたちは待っています。

    カンパニュラの夜を。あなたの帰還を。
    いつまでも。


    だからもう泣かなくていいよ?

    明日を信じてもいいんだよ?


    希望はなくても、ひかりはあるから。

    どんな暗闇にも、朝日はさすから。


    だから××

    あなたに祝福を。


    額のキスは、精一杯のしるし。

    あなたに永遠をあげる。

    最果ての地で、あなたと眠りたい。


    ネビュラス。


    これは、永久の愛のしるし。

    そしてこれが―『ほんとうのさいわい』。



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    幻想叙事詩『ルカ』

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    それは、密やかな秘密。

    それは、不確かな未来。

    あるいは、想像しうる、最悪の結末


    それでも、羽は降りしきる。

    終わりの先の、はじまりを知るために…

    ぼくらは決して立ち止まってはいけない。

    天使が額にキスするとき、見果てぬ夢の、続きをみた気がした…


    『ルカ』



    いつかそう、羽が生まれる朝が来るなら、きっと、あまやかな雨が降る。

    ひそやかな祈りは、虹をかけ、向日葵の向こうへと、僕らを導く。

    掌には、永遠の罪の証。

    今世界の終わり、終わりの世界に羽が降る。

    深い海はそのとき繋がる。


    ぼくらはけして立ち止まってはいけない。

    けれど、もういいのだ。

    ぼくたちは赦された。 ぼくたちを縛る罪も茨も、すべては過去の亡霊。

    もう、泣いていい。笑っていい。

    ぼくたちの物語は終わらないけれど―。

    これからはじまる希望を、ひかりを、もう信じていいのだと、きみはささやいた。


    そうだね、×××。
    ぼくはもう、眠るよ。

    また目覚めたら、そのときは花飾りをちょうだいね…


    そして、あの空の果てまでゆこう。

    きみと一緒に、終わらない夢をみたい。


    ―きみにあの空をあげる。

    ちいさなキスは服従の証。

    対等でなくったってかまわない。

    きみになら、このいのちのすべて、燃やしたってかまわない。


    だから×××、どうか目を開けて。

    遠くにいっちゃだめ。

    お願いだから、ぼくをひとりにしないで…。



    『ルカ』

    それは密やかな祈り。


    『×××』

    それは届かない憧憬。


    すべての眠りが刻まれるとき、あめやかな虹が世界の果てを彩る。


    カンパニュラの夜を待て。

    砂漠に花を。
    夜空に月を。


    そうしてぼくらは知る。

    道は限りなく続くのだと。

    最果てなどないのだと。

    けれど、信じ祈ることだけは、誰にも奪えない。


    ぼくらは最果ての夢をみる。


    それは、けして叶わない、麗しき憧憬の歌―



    27

    アルカンシエル~祝福の虹~

    自分が醜いって知ってるよ―。

    自分が弱いって知ってるよ―?


    ちいさな翼折りたたんで

    終わらない夢をみる


    震える睫毛に宿る雫
    月下の花
    孤独なこおろぎ


    それでも明日を望むなら

    この声枯らして叫べ



    今力をこめて

    晴天の向こう

    タイヨウを目指せ。


    ((そんなきみに告げる))

    物語は終わらないけど、永遠の苦しみなんてない


    ((そんなぼくに告げる))

    そこに希望がある限り、過去は必ず未来を待つ。



    ふたつが重なる奇跡を求めて

    伸ばした手の先

    唯白の光降り注ぐ



    いつか伝えたい歌がある

    そのときはきみの目をみつめて

    そのちいさな手を温めよう


    ちいさなキスは祝福のしるし

    水色の雨が降るなら

    その背に

    虹をかけて

    あの歌の続きを



    眠れるきみの髪をなでながら

    懐かしいページをめくる


    『アルカンシエル』

    それは遠い約束の調べ

    『アルカンシエル』

    それはちいさな翼の物語



    過去と未来が重なり

    恵みの光降り注げば

    そこに永遠がみえるはず…



    (七色の架け橋を見上げきみと飲んだココアの味)

    (少し冷たい冬の風に、その光はまるで未来へと羽ばたく翼の軌跡のようで―)

    (そっとため息をつき、口元をほころばせた)


    (幾千の苦しみが降るとしても構わない―)

    (きっとふたりなら、すべてが叶う。)


    (あの空の果てに、いつかきみと行こう。)

    (それはまだずっとさきの話だけれど―)


    (きみの掌に、涙も溶けた)

    (ああ、なんてあたたかい―。)



    (( 『 僕の祝福の虹(アルカンシエル) 』 ))
     


                              
                                  Jhon Maxwell
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    ヘカテーの弓~ジョナサン・マディソンの焔~Ⅱ


    歴史書には、こうあります。

    誠に凡庸な少年であった。

    しかし、その魂は青々と揺らめき、ネバーブルーの輝きを灯していた。

    彼はヘカテーの生まれし12才より、けして育つことも、衰えることもなかった。

    そして、二百年の時を生き、かの天体に永遠の輝きを約束し、静かにその生を終えた。

    妖精たちは嘆き悲しみ、彼の棺に、たくさんの青い花と、蝋燭を手向けた。

    フェアリーブルーの花々に、ネバーブルーの焔。

    幻想的な通夜は七日間続き、最後にユニコーンが一啼きした時、

    天上の花は空を青く染め、ムーンブルーの光の波が地上を撫でた。

    美しい光の海が去ってのち、人々は、彼らを忘れた。

    残されたのは、事実と憶測のみが書かれた、まったく面白みのない歴史書と、なおも輝き続ける天体のみ。

    切り取られた記憶はいったいどこへ行ってしまったのか…。

    その真実を知るのは、一人の男。

    彼の名はジョン。

    自らは歴史に載ることのない、平凡かつ奇矯な歴史学者。



    ―さあ、奪われた記憶を取り戻せ・・・。
    09

    ヘカテーの弓~ジョナサン・マディソンの焔~Ⅰ

    あるところに麗しの少年がおりました

    彼は特に優れた外見を持っていたわけではありません

    けれど―いたずらっぽく青々と澄んだフェアリーブルーの眼と、大変チャーミングなそばかすを持っておりました

    彼はごく普通の家庭で生まれた普通の子として、普通に生きるはずでした

    しかしです―

    まばゆかな光を纏って彼女が生まれた冬の朝、彼の人生は劇的に変わってしまったのです。

    彼女―ヘカテーは生まれながらにして12の言語を話し、大変恐ろしいスピードで育ちました。

    彼女はまず、1日めに、残りすべてのあらゆる言語を解しました。

    また、2日めにして天を駆け、

    3日めにあらゆる動植物の言葉をかいし、

    4日めに消えゆく星に火をともし、

    5日になる頃には天使や妖精を従え、

    とうとう6日めに、その白魚のような手に虹色の弓を持ち、かの天体を撃ち落としたのです。

    わたしは、今でも覚えております。あれは、ちょうどわたしが22才の頃。

    世界は闇に包まれ、地上は一時、大混乱に陥りました。

    なにしろ、この世の終わりのような轟音とともにあの星が―…太陽が墜ちていったのですから。

    そして更に不吉なことが起こりました。

    海はごうごうと荒れ、わずかな温度さえ失ったこの地球は、凍りついたようにその時を止めました。

    運命の7日め―、地球に麗々とした天使の梯子が現れました。

    そしてなんと、太陽の光を借りていたはずの、本来光るはずもないあの麗しの星が、おもむろに輝きだしたのです。

    それは、まさに彼女と血を分けたる兄弟、ジョナサンに妙なる力が与えられた証でした。


    ただの少年だった彼に、すべてを与えた彼女の物語は、まさに新たな神話そのものでした。


    ですが―…。

    本来持たざるものであったはずの少年、ジョナサンとは一体なにものだったのでしょうか?



    26

    ヘカテーの弓~ジョン・マディソンの悲願~Ⅴ

    ―やがて月は満ちる。

    あかあかと、時に青々と輝くその天球は、

    いまや、この地球になくてはならない、「偉大なる光」を与える唯一の存在である。

    のちに≪少年≫は、彼女に出逢う。

    その少女は大変麗しく、太陽のようにさんさんと輝く蜂蜜色の髪と、月のような魅惑的な白銀の瞳、

    そして神話の女神のように神々しい衣をまとっていたという。

    彼女の名は、ヘカテー。

    宵闇の女神の名をもつ、太陽の射手。

    しかし、なぜ、本来ただの少女である彼女にそれだけの力が宿ってしまったのか?

    それは今後も語られることのない最大の謎であり、恐らく人類史上最大の過ちの結末である。


    太陽はもう存在しない。

    あの巨大な天体は、もはや過去の遺物である。

    しかし、考えてもみてほしい。

    あのまま時が進めば、やがて人類の愚かな所業により、フォトン・ベルトを通過した容赦ない日光が降り注ぎ、

    我らが人類および、たくさんの生き物が滅びていただろう。

    彼女はその太陽を撃ち落とすことにより、その脅威から地球を救った。

    そしてなにものかが、その代わりに、月に焔をともしたのだ。

    その人物こそ、彼女の兄―ジョナサン。

    これは、新たな神話と、そのはじまりを記した物語である―。
    26

    ヘカテーの弓~ジョン・マディソンの悲願~Ⅳ

    それでヘカテーって結局何者かって?

    ふむ、それは難しい質問だ。

    わが妻の娘であり、この世のすべてであり、

    月母、月女王、あるいはそのすべてを裏切る存在・・・。


    まあ、ようはなんでもいいのさ。

    彼女を呼ぶには、どんな言葉も陳腐すぎる。



    ―もうすぐ月が沈む。

    きみはもう家に帰るといい。

    もちろんランタンも忘れずにね。


    なに、結局この話の顛末がわからない?

    それは大問題だ。

    昨日もらった歴史の教科書をなくしてしまったのかい?


    それではしかたない―。

    この本はいまのきみには早すぎるようだ。

    また気が向いたら、取りに来なさい。

    先生はずっとここにいるから、問題ない。

    ―いつまでも、この焔が燃え尽きるまでね。
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    ヘカテーの弓~ジョン・マディソンの悲願~Ⅲ


    あの神話とは違う未来を、ただ我が娘、ヘカテーに託そう。


    太陽になれない僕(ジョン)と月になれない君(メアリー)、神になれない愛し子(ジョナサン)・・・

    ―そして―すべての悲願、ヘカテー。


    ここに、祈りは叶えられた

    今こそ、ゲートが開く時だ

    眠りに落ちた僕を、迎えてくれる娘がいるのだから

    僕は安心して眠ろう

    オリオンを射たアルテミスのように、

    太陽を射るだろう彼女は、君を救う僕の悲願であったのだから


    宵闇の歌を歌おう。やがて訪れる光は、全世界を包むだろう

    この瞼は開かれ、この足は大地を踏み、この手は月を掴む

    そうして焔を帯びたそれを大地に転がして、支配者を気取るのだ―


    ・・・失礼、冗談が過ぎたようだ。

    さて、どこまで冗談で、どこまで本当か・・・。

    その判断はきみにまかせよう。

    ああ。今のきみって誰かって?

    もちろんわが妻のことではない。目の前のきみのことだ。

    そう。この本をきみに託すのも悪くない。

    僕はもう十分生きたからね。

    ジョナサンと妻が死んでから、軽く四百年くらいか。

    ―ああ。今のは別に、聞き流してくれていい。
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