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    『リシアンの契約α アフターエンドロールⅤ “メイサ”~ぼくらは夢のあとで~』



    「―そうか。篠乃先生が、そんなことを」

    メイサさんは、その黒曜石のような黒髪を、
    さらりと揺らし、小さく頷く。

    「―でもぼくは、あの世界のほうが本物だったような気がするんです。
     長い長い、夜の物語…。
     あの世界では、ぼくは辛い現実を、文字通り忘れ、
     すべての望みを、願いを叶えていた。

     そう、古の魔法使い、蝋燭の灯しびと、リシアンとして…」




    「…そうだな。わたしもそう思う。
     あの世界でわたしは黒瑪瑙の騎士王…、
     暁の騎士団<オリハルコン>の長であり、セドウィグの恋人だった。

     あの剣の重みと、生暖かい血しぶき、
     彼と背中合わせで戦ったあの高揚感…。
     すべてがリアルで、かけがえのない日常だった。

     あちらこそが現実で、こちらが夢のような気さえするぐらいだ」

    「…はい」
    ぼくも、小さく頷く。

    「―だとすると、わたしたちが現実だと思っていることは、
     ほんとうは長い長い夢物語なのかもしれない、とふと怖くなる。

     だがわたしは、そのどちらも、けしてなくしたくないのだ。
     平穏でしあわせな日常も、いつ死ぬともしれない焦燥感も、
     わたしにとっては、この命に等しい、愛しい生き様だ。

     どちらかを選ぶなど、ましてや、
     どちらかが偽物など、とても考えられない―…」

    「…ぼくもです」

    「…ぼくも…両方を大切にしたい。
     表も裏もどちらからみるか次第のように、
     そのどちらも本物<げんじつ>だと信じたい…」

    この昼の世界こそが、よくできた白昼夢なのか。
    ぼくだって、そう、何度も何度も考えた。

    でも、ぼくにとっては昼の世界こそ、悪夢だったのだ。

    されど。

    ぼくたちは、どんな現実からも逃げ出してはいけない。

    すべてを受け止め、立ち向かわなければ。
    だからこそ、ぼくは心に決めた。

    あのときぼくにできなかったことを、叶えるのだ。


    もうぼくにはわかっている。

    それこそが、ぼくがあちらに存在できた理由―。

    まもなく、退院だ。
    その前にぼくがすべきこと…。

    そっと拳を握り、ぼくは歩き出した。

    まもなく、朝は訪れる。

    ぼくはそのことを、理屈ではない、本能で感じていた―。






    NEXT STEP,
    HELLO GOOD BYE DAYS...



    FROM moff.

    「センチメンタル・ラボラトリー」




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