--

    スポンサーサイト

    スポンサー広告 comment(-) trackback(-)
    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    29

    『ブラックメイデン・アフターロマンスⅣ~新年は触らぬ神にたたりなし~前編』

    ある日のことだった。風は冷たくも、
    麗らかな日差しが降りそそぐ午後。

    わたしは親愛なる軍師セドウィグや、
    我が騎士団の誉れ高き兵士たちと共に、
    つかの間の休暇をとっていた。

    いくら多忙とはいえ、過ぎた疲労は毒となり、
    全体のパフォーマンスを著しく鈍らせる。
    そうなっては本末転倒だ。

    ―ということで、年に数度、こうして自国で、
    まとまった休みを満喫するのも、
    我が民の仕事で、権利である。

    特に、今は年末だ。
    輝かしい新年を迎えるために、
    せめて今だけは家族とゆっくり団欒して欲しい。

    わたしは日ごとに増えゆく責務に後ろ髪ひかれつつも、
    部下や兵士達一同の愛あるバッシングにより、
    半強制的に仕事を休まされていた。

    それでも溜まった事務作業ぐらいやる、
    というわがままを聞かせてもらい、

    (それでも王でなければ書けない重要書類を除き、
     ほとんどは部下が無理やり奪いとっていった)

    わたしは久々にのんびりとした日常を過ごしていた。

    そんな時である。
    セドウィグとメイド達が、
    愉快に談笑しているのをみかけてしまったのは。

    あのセドウィグが、他人と親しげに話している…!

    わたしは驚きに、思わず聞き耳を立てた。

    「…まあ、それではセドウィグさまは巨乳派なんですのね?
     わたくしなんかどうです?」

    「冗談はその胸だけにしておけ。おれは……以外興味はない」

    なんだと…!セディーが、巨乳以外に興味がないだって…!?




    知らなかった。彼の恋人を自認しておきながら…。

    しかも、胸、胸だと…?
    わたしは自分の胸をそっと確かめる。

    …小さい。両手で包んでしまえそうだ。
    そう、わたしはいまだCカップなのだ。
    背ばかり大きいくせに、とんでもない貧乳…。

    ずーんと落ち込みかけたわたしだが、すぐに思いなおす。
    小さければ、大きくすればいいのだ…!

    手始めに、メイドのなかでも一番の巨乳(Gカップ)かつ、
    器量よしで有名なアンナのもとへと向かった。

    「あら!まあまあ…!
     メイサさまがそのようなことをおっしゃるなんて」

    「む…そんなに意外だろうか…」

    「くすくす…すみません。
     …ですが、さすがはわたくしたちのメイサさまですわ。
     いつまでたってもお可愛いらしい」

    「む…」

    にっこり。
    からかわれたようで赤面するわたしに、
    アンナはいつものたおやかな笑顔を浮かべた。

    「そのままのメイサさまが一番素敵だと、わたくしは思いますわ」

    「そ、そうだろうか…ありがとう。
     そう言ってもらえるとほっとするな」

    「いえいえ…わたくしでよければ、なんでもご相談に乗りますわ」

    蜂蜜のように甘いその笑顔に、
    わたしは大いに癒やされたのだった。

    次に向かったのは、少々性格に癖はあるが、
    有能かつ、Fカップのメイド、ジョゼフィーヌ。

    「…あら?メイサさまではありませんの。ごきげんよう。
     …え、胸?なんてことをおっしゃるんです?
     大きさより形ですわ。
     
     メイサさんの慎ましく美しい、
     お椀型の完璧なお胸こそ皆の憧れ。
     くだらん男の妄言など聞き流してしまえばいいのですわ」

    「そ、そうか…」
    なぜだかやたらと細かい賛辞にちょっとひきつつ、
    わたしは思いなおす。

    「いや、しかし、今後のことを思うと、
     もう少し大きくてもいいような気がするな…」

    「あらまあ。お熱いことで…。私の失言でしたわ。
     どうかさらりと聞き流してくださいませ。
     ちなみに後日じっくりと詳細を聞かせてくださいませね?」

    にまり。
    いたずらっぽく微笑む彼女に、やはりわたしは赤面する。

    「う、うむ…すまないな。
     ありがとう。少し前向きに考えられそうだ」

    とは言ったものの、2連続で笑われてしまった。
    やはり、柄ではないのだろうか…。

    これで最後にしよう、と向かったのは、
    メイドのなかでも最年少だが、よく気がきくことに定評のある、
    ジュリアンヌ(Eカップ)のもとだった。

    「…え!わたしですか?
     わたしではあまり参考にならないような…」

    頬を染め、あせあせと、手をぱたぱたする様子は、
    思わずくらくらするほど可愛いらしい。

    「そんなことはないぞ。
     ジュリアンヌはわたしよりツーサイズは大きいだろう?
     その若さでそれだけのボリュームは充分すごいと思うのだ。
     もしかして、なにか秘訣があるのか…?」

    ついでに、その女子力も分けて欲しい…、
    とまではさすがに言えなかったが。

    さすがに3連続でくすくす笑われるのは勘弁である。
    悪気がないことは充分にわかっているのだが、
    やはり気恥ずかしいものがある。

    おかげで、ちょっとすがるような口調になってしまった。

    「とんでもないです!
     でも、ええと…あっ、
     ミルクとストレッチが効果的だとはよく聞きますわ」

    わたしも、朝と寝る前に必ずミルクを飲んでいるんです。
    と照れながらはにかむジュリアンヌ。

    「確かにミルクは効くらしいな。
     ストレッチか…剣の稽古は常にしているのだが…。
     祭事用の剣舞も毎日舞っているしな。
     なにか特別なストレッチが必要なのだろうか…」

    ふむ、と考えこむわたしに、ジュリアンヌはぽん、と手を叩く。

    「ああ、そうですわ!
     今わたしたちの間で流行っているストレッチがありますの。
     簡単で、しかもよく効くと評判なんですよ!」

    「…そうか!その答えが聞きたかったのだ。
     ありがとう、ジュリアンヌ!これでなんとかなりそうだ!」

    嬉しくて思わず顔をほころばせたわたしに、
    ジュリアンヌはなぜか真っ赤な顔でこくこくとうなずいていた。

    公務終了。自室に戻ったわたしは、さっそくそれを試してみる。

    ええと…まず、四つんばいになる。
    更に両手を伸ばし、胸を床方向にしならせるように伸ばし…、
    お尻を後ろに引き、高く突き出す…。

    こ、これはなんというか、間違っても人前ではできんな…。
    恥ずかしがりつつ、3セットほど行ったところだった。

    「…なにをしている」

    背後から聞こえたのは、いつものぞくっとするほどの低音。

    「せ、セドウィグ!
     あなたこそいきなりなんだ!ノックぐらいしろっ!」

    おかげで胸は、ばくばくと早鐘を打ってしまう。

    「―したのだが。やはり最近のお前は腑抜けているな。
     それでもこの国の王か?」

    「…む。確かに最近は刺客の気配もないし、
     スパイのにおいもしない。
     あなたのいう通り、少し油断していたかもしれないな」

    むろん、これが部外者や悪意を持つ者、
    並びに身内の中の裏切り者なら、
    わたしの“心眼”で即座に勘付いている。

    まがりなきにも黒の神と契約した騎士王。
    戦と陰謀にはめっぽう強いのだ。

    だが、白の国に敗北したのは、ひとえにわたしの力不足。
    本来なら、国民に愛想を尽かされて当然なのである。

    しょぼん、としたわたしの頭を、わし、となで、セドウィグは言う。

    「―で、そのポーズはなんだ?」

    「…はっ」

    かあっとなりつつ、慌てて姿勢を正す。
    元のポーズのままだった!
    あまりに動揺しすぎて色々とおかしいぞ!!

    「いや、なんでもないのだ、なんでも…」

    彼の前では、どうもわたしは駄目だ。
    帝王学も、王としてのプライドもなにもかも吹っ飛び、
    勝手に舞い上がって、
    阿呆(あほ)なことばかりやってしまう…。

    「なんでもないことをやるようなお前ではあるまい?
     それに、その型…若い娘の間で流行っているとかいう、
     新しい…」

    びくっ。

    「―ダイエット法だろう?
     お前ダイエットは成功したと言っていたくせに、
     それ以上ガリ痩せする気か?
     その貧相な胸が更に貧相になる前に、やめてほしいものだな」

    「ひ…貧相…」

    わたしは涙目になる。

    (…やはりわたしでは不満なのだな、セドウィグ…。
     こんな女らしさのかけらもない性格と、
     この胸では仕方ないか…)

    「すまない、セドウィグ…わたしときたら、慢心していた。
     やはりあなたに相応しいのはアンナような、
     器量よしの女なのかもしれない…」

    「お前…?」

    セドウィグが次の言葉を述べる前に、わたしは言った。

    「いや、それ以上言うな!
     わかっているんだ。
     わたしではあなたに釣り合わない…わたしは、わたしでは…」

    ひっく。

    あれ、なんだ…?
    ぼろぼろと、わたしの目から、なにかがこぼれ落ちる。

    なんで、わたしは泣いているのだ…?



    関連記事
    スポンサーサイト

    comment

    post comment

    • comment
    • secret
    • 管理者にだけ表示を許可する