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    『ブラックメイデン・アフターロマンスⅣ~新年は触らぬ神にたたりなし~後編』

    なんで、わたしは泣いているのだ…?

    こんなこと、なんてことないじゃないか。
    もともとわたしは王で、セドウィグは軍師。
    身分違いなのも、お門違いなのも、当然で。

    わたしのような女らしさのかけらもない、
    つまらない女が飽きられるのも、当たり前のことだろう?
    いつからわたしは、こんな思いあがった、面倒くさい女になったのだ?

    「…ふ…っ…」

    しかし、いくらこすっても、涙は止まらない。
    まるで壊れた機械のように、
    わたしはなんども溢れつづける涙を拭い続けた。


    「…ハァ…」
    セドウィグのため息が聞こえる。
    びくり、と怯えたわたしに、降った言葉は。




    「お前は、何度言わせれば気が済むのだ…」

    ふわり。セドウィグの手が伸びて、強く抱きしめられる。

    「お前はおれのものだ。
     お前を手にするために、一体どれほど苦労したと思っている?
     もう二度と、あんな七面倒くさいことはごめんだ。
     お前が泣いて嫌がろうが、おれは二度とお前を手放すまいよ…」

    そんなことをするぐらいなら、いっそ潔く死んでやる―。

    そういったセドウィグの顔はみえない。
    だが、その両腕は痛いほど主張する。

    ぎしり、と鳴るほどのきつい包容に、
    わたしはもうひとしずく涙をこぼす。

    「…痛いぞ、セドウィグ…」

    わたしの声を知らないふりして、いっそう固く抱きしめられる。

    本格的に痛い。
    まっとうな娘なら、悲鳴をあげているレベルの腕力だ。
    だが、おかげでわたしの目は覚めた。

    セドウィグ。
    あなたはいつも大事なことを口にしない。
    それでいて、言ったつもりでいる。

    だが、あなたが言わないのは、
    面倒くさいとか、恥ずかしいとか、
    そういうくだらない理由ではなく…。

    あまりに強い感情に、わたしが壊れてしまわないよう、
    蓋をしていてくれたのだろう?

    溢れる激情に、わたしを溺れさせ、
    強い束縛にわたしの翼をもいでしまわないよう、大切に、大切に。

    戦いしか知らないのは、わたしだけではなかったのだな…。

    あなたはいつだって、加減をしらない。
    壊れものを扱うような器用なことなど、ほとんどできやしない。
    ただ、全力で愛し、全身で己をぶつける…。

    でも、わたしだってそうなのだ。
    戦いにあけくれ、剣を振るすべのみ上達するばかりで、
    赤子ひとつあやせやしない。

    いつだって不安で、途方にくれることばかりだ。

    うまく愛すすべも、愛されるすべも知らないわたしたちは、
    もどかしいほどに不器用に、
    まるで足りないピースを集めるように、相手を抱きしめる。

    いっそおかしいほどに、夢中になって、口づけする。

    だが、そんなあなたが愛しいのは、
    そんなあなたを愛せて、泣きたいほど嬉しいのは…。

    ひょっとしたら。

    わたしだけでは、なかったのかもしれない…。

    不意にこみ上げたのは、溢れんばかりの愛おしさと、
    胸を叩くような勇気だった。

    「セディー…。わたしはがんばるぞ。
     あなたに相応しい、女らしく、巨乳の女になる。
     アンナほどとはいかないかもしれないが、
     今にDカップ、いやEカップぐらいになってみせる」

    だから、待っていてくれ…。

    そう囁いたわたしに、セドウィグは、ふっとわたしの体を離した。


    (―あ…)


    もしかして、キスされる…?


    べちんっ!

    「…いっ…?! 」
    額をしたたかに叩かれ、わたしは思わず声をもらした。

    「あほか。まさかお前、先日のおれの話を盗み聞きしていたな?」

    「う…っ、盗み聞きではないぞ、
     たまたま、偶然耳に入ってしまったのだっ」

    「確かにおれは巨乳が好きだが…、
     それはあくまで嗜好の話でしかない。
     おれが好きなのはお前だ。
     とうに定員は一杯、この先一生、おれはお前以外愛する気はない」

    え…っ!

    なんだ、じゃあわたしはひとりで勘違いして…。
    悩んで、じたばたうじうじと、いらぬ心配をしていたのか…。

    「…まったくお前は…」
    首をふったセドウィグは、俯いた。

    「セドウィグ…?」

    「―ならば、おれがもんでやるから問題はないな…?」

    くっくっく。地の底から響いてくるような笑い声。

    あ、これはやばい。
    わたしはふらつきながら距離を取る。

    「逃げても無駄だ」

    手を取られ、尻餅をつく。

    「いっただろう?泣いても離さないと。
     どこまで逃げようと、地獄の番犬ケルベロスのごとく、
     地の果てまで追いかけてやるとな…! 」

    「いや、そんなことは聞いてないぞっ!
     ちょ…ひゃっ、この…!だからあなたは嫌なのだーっ!!」

    わたしの悲鳴がこだまするのも、時間の問題だった。



    今日の教訓:けしてセドウィグの前で泣いたり、
    むやみに刺激したり、ましてや告白させてはならない。

    ※絶対後で美味しく食べられ、翌日の公務に支障が出るため
    …(がくり)。



    ~Fin.~






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