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    『夏芽楽団交響曲 “飛翔”』

    守ってくれる人が欲しかった。
    なんでわたしはパパにもママにも似ていないの?

    かばってくれる人が欲しかった。

    『あいつん家、ママハハとママチチだぞ!おれ聞いたもん!』

    お姉ちゃんが欲しかった。血の繋がった、家族が。

    『パパとママの―うそつき!!』

    そう思ったこともあった。
    でも、わたしは、笑わなきゃならないんだ。
    強くならなきゃいけないんだ。

    わたし、バカだよ。でもバカだからわかるよ。

    パパも、ママも、わたしを愛してくれてることが。

    たとえ血が繋がっていなくても。
    本当の家族じゃなくても。
    本当の本当は他人でも。

    それでも、この繋いだ手のぬくもりは消えないよ。
    抱きしめてくれた感触はなくならないよ。

    優しくしてくれた事実は変わらないよ。

    そう。

    “笑顔は、愛は、最強”なんだよ。

    だからわたしは、不安を笑顔に、さみしさを燃料に、
    いつも明るく元気に生きてきた。

    たまにこっそり泣いて、
    でも、そのことは誰にも知られないように振る舞った。

    なんの悩みもない、どこにでもいる、
    フツーの、元気なだけが取り柄の女の子として。

    そう、わたしは望んで、うそをついたんだ。
    明るいわたしも、元気なわたしも、
    本当はぜんぶうそで、うそで、うそなんだ!!

    顔を覆ったわたしに、唯音は、手を伸ばしたのかもしれない。
    頭に触れようとしたのか、肩に触れようとしたのか。

    衣擦れの音が、わたしの耳を掠めた。

    数瞬ためらって、そして唯音は、口を開いた。


    「ペルソナって知ってるか」
    「え?」


    わたしは思わず、顔を覆った手をわずかに下ろした。

    「心理学用語だ。
     人がなにかを演じようとする時の仮面のことを言う」

    一体、何を―?
    わたしは不思議そうに、唯音をみあげる。

    「何回演じようが、きみの本質は変わらない。
     取るに足らない、つまらないものだ―…、
     …そう思うかもしれない。

     だがそれは嘘だ。それこそ嘘なんだ。
     嘘どころじゃない、大間違いだ」

    唯音は、らしくもなく、誇張するように言った。

    「君の仮面も、また君自身なんだ。
     人は美しい表現を口にすることで、自らも美しくなる。
     いや、美しいと感じるその感性こそが美しいんだ。
     
     人は他人のなかに自分自身をみつける。
     そして、自分自身のなかに他人をみつける。

     そう、君の演じたものは、君の作りだしたものは、
     すべて君自身という材料からできているんだ。
     
     君は明るい自分を、元気な自分を、
     本当の自分ではないといった。
     
     ―でも、そんなわけはない。
     材料がなければ、家は作れない。
     食材がなければ料理はできない。

     君は、明るくて、元気な種を持っている。
     だから花が咲いた。
     いつも明るくて元気な、君という花が」
     
    唯音は、こんどはためらうことなく、わたしの肩に触れた。
     
    「…だから、悲観するな。嘆くな。
     君はいつだって、君だ。君自身だ…。

     君の嘘など、君の隠し持った真実の前では、
     ちっぽけなものだ。
     
     たとえ君がどんなに落ち込もうとも、日は登る。
     君がどんなに暗くなろうとも、光はさす。
     ―そう、多くの影を取り除くのは、
     一筋の日光でじゅうぶんなんだ」

    唯音はそっと、その手を差し伸べた。

    「“笑顔は、愛は、最強!”なんだろ?
     ―それを、君の手で証明してみせてくれ」

    わたしには、唯音の姿に、まるで太陽がさしたようにみえた。

    唯音らしかった。
    その場しのぎのウソも、甘いだけの優しさもくれない。

    理屈っぽくて、長ったらしくて、
    バカなわたしには半分も理解できない。

    だけどね、唯音。わかったよ。
    きみは全力でわたしを励まそうとしてくれている。
    理屈っぽくて、長ったらしいなりに、
    愛を込めて、激励してくれている。

    だったら、わたしは、応えたい。
    唯音の、励ましに、優しさに、その、溢れそうな愛に。

    「―うん!!」わたしは大きく頷き、その手を取った。

    その手はひんやりと冷たくて、
    でも少し柔らかくて、どこかあたたかった。

    ほんのちょっぴり、しめっていた。

    わたしは少し泣きそうになって、思いっきり顔をあげ、笑った。

    「証明なんて簡単!笑顔は、愛は、いつだって最強だから!」

    理由になっていない、と笑い、おかしそうに涙を拭う唯音に、
    照れながら、はにかむ。

    ねえ、唯音。
    きみは、わたしを救ってくれる。
    そんなきみに、わたしも応えたい。

    最初はね。
    きみをすきになったのに、理由なんてないと思ってた。

    だけど、今日、わかったよ。
    わたしは、きっと唯音に救われるために、
    そして、唯音を救うために、生まれてきたんだって。

    今日までの悩みも、痛みも、悲しみも、辛さも…
    ―みんな、そのためにあったんだって。

    もしこの朝顔の世界に、
    女神さまがいるなら、わたしはこう言うよ。

    『約束します。
     ―わたしは、唯音のために、この命を使います!』

    難しいことはわからない。
    単純思考かもしれない。
    後先なんて、ぜんぜん考えていない。

    だけど、今、わたしは唯音を、
    過去も未来もひっくるめて、
    大切にしたい。
    ―守りたい。

    時には守られたいし、
    それ以上にたくさんのものをあげたい。

    わたしは唯音に、ぜんぶあげたっていいし、
    唯音のぜんぶがほしい。

    そのためだったら、命をかけたっていい。
    だから、誓うよ、唯音。
    わたしは、きみを―…。





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