--

    スポンサーサイト

    スポンサー広告 comment(-) trackback(-)
    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    10

    『鏡の森のエトワール』~第2話 “魔性の瞳と迷子の娘”~

    ぱきん、と鈍色の枝が折れる音がする。

    「迷った…」

    寒い。
    腕を抱えながら、何度もした問いを繰り返す。
    ここはどこだろう。
    わたしは、一体なんでこんな、
    こんな森のまっただなかでさまよっているんだろう。

    記憶喪失?
    夢?

    でも、かじかむ指が否(いな)、と告げている。
    夢なんかじゃない。
    現実だ。






    茫然(ぼうぜん)と周囲を見渡す。

    鏡のように反射する鈍色の木が、まるでアートみたいに並んでいる。
    鏡の木のなかに映る木。無限に続いてゆく森。
    ―鏡森。

    そういえば、おにいちゃんはどうしているかな。
    心配していないかな。混乱してないかな。
    おにいちゃんが心配だ。
    早く、この森を抜けないと。帰らないと。

    町はどこだろう。
    いや、ここはたぶん、あの展覧会の一部なんだ。
    たまたまひとけがないだけで、アートミュージアム的なお庭なんだ。

    そう考えるも、あまりに現実感に欠けている。
    いくらなんでも、何十分も歩いてもなにも現れないわけがない。

    ひょっとして、わたしはすでに死んでいて、
    ここは天国か地獄だったり。

    ぞっとして、足を速める。

    早く、ここから出ないと!!

    「…あっ」
    視界が反転する。

    「い…っつ…」
    ふくらはぎに、枝がささっている。
    じくじくと痛むと思ったら、血が流れ出している。

    「…っっ」

    思わず、泣きたくなった。
    このまま、死んじゃうんじゃないかな。
    血がどんどん流れて、凍えたまま、冷たい死体になるんだ。

    おにいちゃんには、もう会えないんだ。

    「…ふっ…」

    かさ。
    その時、足音がした。

    葉を踏みしめる音。

    音はだんだん近づいてくる。

    振り向いた。

    見上げた。

    「ぁ…?」

    赤いびろうどのローブ。
    オニキス色の長い髪。
    つやがある。腰まである。
    唇は薄い。
    陶磁器みたいな肌だ。
    いや、そうじゃない。
    問題は、そこじゃない。
    目が吸い込まれるようにその部分に引き付けられた。
    赤紫と青紫。
    一級品の宝石みたいなそれは、魔性のオッドアイだ…!

    「おまえ」
    とそのひとは言う。
    低い声に、大人の男性なのだと遅れて気づく。

    彼は、こちらを凝視して、瞳を細めた。
    続いて、唇が満足そうに弧をえがく。

    こちらに向かって、その手が伸びた。

    長くするどいつめに、びくりとする。

    あと五センチ、三センチ、一セン…。

    ドオオォォオオオン…!!
    その瞬間、雷の音とともに、ものすごい火花が散った。

    身体がしびれる。
    最後にみたのは、とびちったそのひとの半身だった。





    ☆★ランキングに参加しています!★☆
    ↓ぽちっとクリック・拍手等していただけると、
    とっても励みになります!



    br_decobanner_20120205210256.gif

    関連記事
    スポンサーサイト

    comment

    post comment

    • comment
    • secret
    • 管理者にだけ表示を許可する