--

    スポンサーサイト

    スポンサー広告 comment(-) trackback(-)
    上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
    新しい記事を書く事で広告が消せます。
    22

    『鏡の森のエトワール」~第9話 “レチタティーヴォに終止符<ピリオド>を~

    「“ショートカット”」わたしは、その言葉をまじなう。








    鏡池の主、スノゥは言った。

    「なぜお前が魔王を凌駕(りょうが)するエナジーを持っていたのか?
     それは我にもわからん。
     
     だが、お前の超過交響曲<オーバーシンフォニ―>…
     それは、共鳴性の波動を持った一種の超能力だ。
     
    代々、姫巫女(ひめみこ)に伝わる、相手の感情に共鳴し、
     それを我がことのように把握(はあく)し、
     あるいはそれと同等の波動を反射するもの…。

     ―いわば、対魔力型の自動的な迎撃<カウンター>だ。
     だが、それはお前…汝(なんじ)の能力の一部にすぎない。

     その主たる能は、見えるものと見えないもの、
     ここにあるものと、ここにはないものとを繋ぎ、取り持つこと。

     ゆえに明確なイメージを持って望めば、
     「彼方」と「此方(こなた)」の間(あわい)を繋ぐことにより、
     世界の端から端まで跳躍(ちょうやく)し、
     空間を超越することも可能。

     また、波動を展開し、、
     対象を索敵(さくてき)することもたやすい。

     つまり、お前は間違いなく、
    この世界では最強のエナジーを有するわけだ。

     ―あの能無し小僧は気に食わんが、
     お前なら、確かに魔王の花嫁たりるだろうな…」


    「それって…、魔王の赤ちゃんを…」

    「―産めるだろう。もちろん、可能性の話だが」

    「……っ」

    「ただし、お前も薄々感じておろうが、
     魔王の花嫁となることは、あの月光蝶…月花を捨てるということだ。
     お前の想いは誠であろうが、その覚悟はできているか?

     生半可(なまはんか)な思いで挑(いど)めば、
     情にもろいお前のことだ、なし崩しにほだされてしまうやもしれん。
     それこそ“情け”と“恋”を混同してな…」

    「……スノゥ」

    「勘違いするな。責めているわけではない。
     ただ、魔王は月花を選んだ。
     おそらく、奴なりに考えた、苦渋(くじゅう)の末の決断だ。

     その決意を揺るがせるだけのものを用意できぬのなら、
     魔王に…そして月花に挑(いど)むべきではない。
     お前なりのけじめを、ここではっきりとつけておくべきだということだ」

    (―けじめ……)

    魔王にとって月花は、自分のたったひとりの同朋(どうほう)だった。
    母を自らの誕生により亡くし、高齢であった父が死んでのち、
    たったひとりで鏡森の主として君臨(くんりん)した、
    ひとりぼっちの魔王は、

    両親を持たず、育ての母をも自分のせいで殺された月花を、
    自分の片割れのように…家族のように思っていたのかもしれない。

    (―そんな魔王に、わたしを選べって言うのは、
     月花を捨てろっていうのと同じだ…)

    月花はわたしに恋をしたから、魔王の前から姿を消した。

    月花は、魔王より、わたしを選んだ。

    一方、魔王は、わたしより、月花を選んだ。

    だから、わたしは、よく考えなきゃいけない。

    ―魔王のことがすき?月花を踏みにじってもいいくらい?

    …わたしは自分のために、
    大切なひとから、たったひとりの家族を奪える?


    (…ダメだ!―そんなこと、できない…!)


    もしわたしが、だいすきなお兄ちゃんを奪われたら。

    わたしはきっと、この世の全部を捧げられたって、許せない。

    悲しくて、とても我慢なんてできない。
    きっと、大泣きするだろう。だいすきなパパを亡くしたときみたいに。

    だからわたしは、そんなこと、しちゃいけない…!

    「―どうやら、お前には選べないようだな。
     …だが、お前は少し勘違いをしているようだ。
     
    月花が魔王のもとから去ったのは、
    お前に恋をしたからだけではない。
     さすがに我といえどこれ以上の干渉はすまいが…、

     お前は、一度月花に会っておくべきだ。
     さすれば、お前の答えは決まるであろう。
     そう、敵は彼方にあらず。己の無知こそが最大の敵なのだからな…」

    そう言って、スノゥは去ってゆく。

    (―あれ、回想をしていたはずなのに…こんな記憶、あったっけ…?)

    それはまるで、わたしの心…ううん、
    脳の海馬(かいば)そのものに、スノゥがアクセスしてきたようだった。

    光が辺りをみたし、眩い色彩が散る。
    わたしは、スノゥの言葉を、反芻(はんすう)する。

    明確なイメージ。
    “彼方”と“此方”…“遠く”と“近く”の間(あわい)を、つなぐ。
    ふたつの間に距離はない。
    ただ、飛び越える。

    同時に展開するのは、寄せては返すさざなみだ。
    月花のにおい。かたち。声。
    そのすべてを、世界すべてに問いかける。
    そうして世界を、わたしの波動で被(おお)う。

    難しくなんてない。
    できる。
    実感はわかない。
    だけど、スノゥは、こう言ってくれた。
    わたしは姫巫女だって。
    大切な役割があるんだって。

    ―だから、できる。
    ぜったいに。

    わたしは、月花に、会いに行く。
    もう、逃げない。
    伝えよう。
    わたしのほんとうの気持ちを。

    そして、魔王に…。


    ―カチッ。

    エコーが、返ってくる。
    半径1.5キロと20メートル5センチ。
    間違いない。月花は、近くにいる…!

    もう、スノゥのナビゲートはいらない。


    (待ってて、月花…!)


    ―わたしは、けじめをつけに行く。





    ☆★ランキングに参加しています!★☆
    ↓ぽちっとクリック・拍手等していただけると、
    とっても励みになります!



    br_decobanner_20120205210256.gif

    関連記事
    スポンサーサイト

    comment

    post comment

    • comment
    • secret
    • 管理者にだけ表示を許可する