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    06

    『鏡の森のエトワール』~エピローグ~“P.S.交響曲<シンフォニー>は眠らない”

    本編の後日談<エピローグ>となります。
    本編未読の方はご注意を…!
    魔王がわたしの頭を撫でる。
    「お前は普通になったな」

    ソファーにねそべるわたしは思う。 魔王のひざまくらは気持ちいい。
    かたくて、ひんやりとしていて、でもどこか柔らかくて、あたたかい。

    「うん」

    「よくしゃべるようになったし、笑うようになった」

    「…うん」

    「泣き虫にもなったな。あの時の泣きっぷりは、肝が冷えた」

    「魔王のせいだよ」

    「…そうだな、私のせいだ」

    「…そうだよ」
    わたしはくすくすと笑う。

    「あの時は、悪かった」

    「今更だし」

    けらけら笑って、ふと、ひざまくらのまま、魔王をみあげる。

    「…だけど、魔王のおかげだよ」

    「…そうか」

    魔王は嬉しそうに、それだけ言った。

    最近みつけた魔王の癖。

    嬉しいと、口数が少なくなる。

    わたしも嬉しくて、また目を閉じる。

    魔王のおかげだ。
    わたしがしゃべれるようになったのは、夏芽おねえちゃんのおかげ。

    お兄ちゃんとのぎくしゃくが治ったのは、
    エマおねえちゃんのおかげ。

    それでも、わたしが普通の女の子になれたのは―
    …魔王のおかげ。

    魔王にしかできなかったこと。

    まどろみながら、あの少年を思い出す。
    瑠璃色の髪。
    お月様みたいな銀色の瞳。

    ―月花。
    わたしと魔王を引き合わせてくれたひと。

    きっと月花がいなかったら、わたしは魔王に出会っていなかった。

    そして、うぬぼれかもしれないけれど…、
    わたしと月花が出会ったことが、さいごのさいごで、月花と魔王を、
    ほんとうの家族にしたのかもしれない。

    そう思うと、わたしの胸はほんのりとあったかくなる。

    ―月花。あなたは今、どこにいますか?

    …わたしは、ここにいるよ。

    魔王のそばに、いるよ。

    だから、いつか、帰ってきてね。

    そしたら、わたしはきっと、おかえりって言えると思う。

    月花の家族に、なれると思う。

    ―今なら、月花が、わたしをすきになってくれた理由がわかる。

    月花とわたしは、まるで鏡のこちらとあちらだった。

    どこもかしこも、似ていた。

    ―まるでふたごのきょうだいみたいに。

    そう。
    月花が、ほんとうにすきになりたかったものは…。
    魔王で、世界のすべてで…
    そしてなにより、自分自身だったんだんだから。

    月花が魔王に素直になれなかった理由。
    それは、自分のせいでお母さんが死んでしまったこと。
    救えなかったこと。
    なのに、自分だけ助かったことなんじゃないかって、思う。

    そんな月花を魔王は許して、包み込もうとした。
    でも、月花は、きっと自分自身を許せなかったんだ。

    そして魔王も、お母さんとお父さんをなくして、
    月花のことも、うまく向き合ってあげられなかった。

    …きっと、魔王だって怖かったんだ。
    月花が家族になって…そのあとは?
    きっと、不死の魔王はいつかひとりになる。

    ほんとうは愛されたいし、愛したいのに、
    もどかしいぐらい、ふたりは怖くてたまらなかった。
    だから、あと一歩を踏み出せなかった。


    でも、とわたしは思う。
    そんなじたばたも、きっとなにひとつ無駄なんかじゃない。

    かなしいかたちで家族を失ったふたりだからこそ、
    誰よりも太く、深い絆で結ばれた、ほんものの家族になれたんだって。

    ふたりはこれから、違う道を歩くかもしれない。
    でも、どんなに離れたって、心は繋がってる。

    またケンカするかもしれない。
    怒ったり、裏切られたみたいな気持ちで、悲しくなったりするかも。
    でも、きっとそんなことじゃ、もうふたりは、離れたりしない。

    月花のなかで生きる魔王の心臓は、
    月花をもうひとりぼっちにはしない。

    血も、命も分け合ったふたりだからこそ、
    この世でいちばんの、<最強の家族>なんだ。

    わたしと月花の話にもどる。

    わたしにとって、月花は、王子様で、ヒーローだった。
    だから、これが恋だって信じて疑わなかった。

    今なら、違うってわかるけど。

    抱きしめてほしい、と抱きしめたいの違いを、
    憧れと、愛しいの違いを知った今なら、
    それは違うよって、きちんとわかる。

    ―でも。
    恋にしてはあまりにきれいすぎて、
    おとぎばなしのなかの物語みたいな、おままごとみたいな。
    おさなくて未熟な、半熟卵みたいな恋だったかもしれない。
    ほんものの恋には遠かったかもしれない。

    でも、それでも、いつか。
    わたしが魔王に恋したように、月花も、きっとみつける。

    じぶんの、<百%の特別(だいすきなひと)>を。


    さいごに。
    どんな悲しみも、
    ハッピーエンドを飾る修飾曲<アラベスク>にすぎないって、
    あえて、言ってやりたいと思う。

    神様に呪われた人生とか、運命に裏切られた人生なんて、
    わたしはぜったいにみとめない。

    だって、わたし達はあきらめないから。
    たとえどんなことがあっても、どん欲に、ぜんぶがほしいってあがく。

    傲慢(ごうまん)とか勝手とか、子どもっぽいなんて、知らない。

    もしどうしても、これだけは選ばなきゃって時が来たって、
    大切なひとつのために、もうひとつの宝物を捨てたりなんかしない。
    だって、そんなことに、意味はないから。

    魔王が最後にそうしたように、わたしだって、両方がほしいって言う。
    そのために、もしできることがあるなら、なんだってする。

    だって、ほんとうに大切なものは、
    たとえどんなことがあっても、ぜったいに捨てたりできないんだから。


    …長々と書いちゃったかな。
    この物語はここで終わるけれど、わたし達の人生は、続いてゆく。

    ―フィナーレには、早すぎる。

    愛したくて、愛されたくて、もがいて、叫んで、戦って。
    これが、わたし達の歩く道。

    どんな喪失<エレジー>が襲ってきたって、かまわない。
    今は苦しくたって、そんなのただの夢<トロイメライ>だって、
    いつかは覚めてゆくものだって、何度だって言う。

    もう、悲劇<トラーディエ>なんて、言わせない。

    恋の歌<セレナーデ>を、優しい子守唄<ヴィーゲンリート>を、
    わたし達は永遠に紡ぎ続ける。


    だってこれが、この道こそが、
    “わたし達が、力を合わせて、乗り越えてゆく人生”
     <オーバーシンフォニー>なんだから―。



                   エヴェリーナ・スワン



    P.S.なんか、大人ぶって書いちゃったけれど、
    わたしのほうは、そんな感じです。

    そうそう、いいニュースがあったんだった!
    魔王は、月花にふたつめの心臓をあげたから、
    もう不死じゃなくなったらしい。

    年をとるのは相変わらずゆっくりだけど、
    前に比べると、そこまでじゃないスピードになったみたい。

    もう、ふたりともさびしくないね。
    (神さまはほんとうにいたんだね。
     いや、ほんとは、スノゥ…えっと、イドール?が神さまだったのかな?)

    もちろん、わたしも将来がんばって家族を増やすよ!

    これからたくさんの魔族が、
    魔王や、月花を狙ってやってくると思う。
    でも、わたしとスノゥにかかれば、きっとどんなやつも倒せるよね。

    スノゥはこの世のすべてを見通す目を持ってるし、
    年の功で、作戦番長とかをしてくれてるし。
    (やっぱりおじいちゃんは最強だ!!)

    もう不死でもないし、家宝のルビーもない魔王とその家来は、
    ぶっちゃけおまけだけど、大丈夫。

    月花も、魔王の知らないところでこっそりお掃除してるみたいだし。
     (もちろん、ぶっそうな意味です。
      魔王を裏から始末しようとするやからは、
      わたしと月花とスノゥの三国同盟軍が許さない!)

    結婚式はまだまだ先だけれど、気長に待ってあげようと思います。
    魔王の心の準備ができるまで、
    心の広いわたしは、ちゃんと見守るつもりだよ。

    (もちろん、それが早まるための努力はばっちりする予定なんだけど、
     それは魔王には内緒(ないしょ)!)

                
                     大好きなお兄ちゃんへ。
                     エヴェリーナより、愛をこめて。







    ―ねえ。月花。わたしはいま、しあわせだよ。
    だから、月花にも、たくさんいいことがありますように。
    今度、月花にも手紙を書くね。

             
      あなたの家族―エヴェリーナより、愛をこめて。
           …なんて、まだ照れくさいけど!









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    comment

    Nicola
    読了です(*´ω`*)
    な、なんだかエトワールを一瞬で読みきってしまった感が…!!!
    リシアンも続きが気になる物語でしたが、エトワールはさらにそれの上をいきました。
    気になるどころがガンガン勢いをつけて読みました。
    なんかどこで一時停止をすればいいか分からない!!!と思いながら読みました笑

    後半は本当に怒涛の勢いでしたね……!
    これどうするんよ!って一人でヒヤヒヤしてました笑
    マルガリータさん出てきてくれてよかったです。
    月花もほんまね、よかったです。最初から最後まで格好いいわ可愛いわでさすが月花。

    次はどれにしようか悩みつつまた来ます(*´ω`*)
    エトワール面白かったです!
    2013.11.10 21:48
    ❁♥REO♥❁
    一晩寝たら回復しました…おかげさまです*´ω`*

    おお!楽しんでもらえてよかったです!!
    『リシアン』が<広がっていく世界>なら、『エトワール』は<収束していく物語>なので、やや短めとなっています…!
    『エトワール』のほうはすべての伏線を回収し、綺麗に完結してしまいましたが、
    『リシアン』・『夏芽楽団交響曲』は未公開話などがいくつかあるので、
    好評ならまだ未回収の伏線を回収しつつ公開しようかな?と思っています。
    リクエストなどあったらお気軽にどうぞ~!
    (必ずしもお応えできるかはわからない…というか作者のひらめきと力量しだいですが!)

    最新作は未定ですが、
    (とりかかる予定だった『青空レンズ』は『エトワール』の後だといまいち気乗りしないのです…ボツになる可能性も…!)
    またちまちま執筆頑張りますね!*´艸`*





    2013.11.12 13:06

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