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    『夏芽楽団交響曲』 ~最終楽章 “夏芽楽団交響曲”~

    「お前は、唯音のやつが男じゃなくてもいいのか?」



    「え? なにが?」

    「いや、だから、俺はエマのために…じゃなくて、
     エマを落とすために男として生きて、
     普通に男らしく振る舞おうと思ったわけだけど、
     お前は、付き合ってる唯音が女の格好しててもいいわけ?」

    烈火が、少しすねるように言う。

    「うん。唯音は唯音だし。
     男子の格好でも、女子の格好でも、唯音だってことは変わらないし。
     これは、唯音が向き合う問題だから。
     唯音がいいならいいし、変わりたいなら、助けになるし。
     …でも、唯音はなにも言ってくれないから、
    わたしはそっとしておくんだ」

    「物わかりがいいのか悪いのかどっちかにしろよ。
     …まあ、それはお前のいいところでもあるか。
     無理強いしない。負担をかけない。
     だからエマのやつも、最初からお前に気を許していたんだな」

    そして俺は見事に嫌われていたっけな、と苦い顔をする烈火。

    「…いや、エマは最初から烈火に惹かれていたと思うよ」

    「…ん?」

    聞き返す烈火。

    「だって興味なかったら、烈火のことみてないよ。
     エマがあんなに烈火の弱点を知っていたのは、
     烈火のことをいつもみてたから。
     他人に無関心でドライなエマがだよ?
     それって、好きの反対っていうより、反動だったんじゃないかな」

    「…そうか?」

    その発想はなかったらしく、考えこんでいる。
    思いあたるところが全然なくても、こうして真剣に検討してくれる。
    最近みつけた、烈火のいいところ。
    嬉しくなってはにかむ。

    だから、わたしは烈火がすきだ。
    友達としてだけど、唯音と出会わなかったら、
    もしかしてもしかしたかもしれないぐらいに。

    かっこよくなった烈火は、前より素敵になって、もっと烈火らしくなった。

    これまでの烈火は、自分が女で、
    コンプレックスなんかないんだとアピールするために、
    色々無理をしていた。
    それをしなくなった烈火は、かえってすっきりして、自信もついて、
    前とは違う意味でまた女の子をキャーキャー言わせている。

    そして、そのきっかけになったのは、エマ。

    烈火のコンプレックスを鮮やかに暴いて、
    ぎったんぎったんにしたうえ、ハートまで盗んじゃった張本人だ。

    「ほら、好きの反対は嫌いじゃない、無関心だ、って言うでしょ。
     エマはそれだけ烈火が気になって仕方がなかったんだよ。 
     無関心のフリを崩しちゃったのだって、
     烈火がいきなり告白したから、動揺しちゃったんだと思うよ」

    「そうなの…か?」
    やっぱりピンとこないみたいで、眉根をくしゃくしゃにする烈火。

    「…そうだよ!
     もう、烈火は普段賢いのに、自分の恋のことだとこうなんだから!
     エマが怒るわけだよっ」

    「…げっ!あいつ怒ってたのか?!」

    お嬢様キャラやめてから、烈火は少し下品になりました。
    主に言葉使いが。
    そして、鈍感なのである。なむ。



    わたしは、そっと思った。
    いつか、唯音が、わたしに弱いところをみせてくれたらいい。

    わたしは、烈火みたいに情熱的なアプローチで心を開かせる、
    面倒見のいい親分みたいにはなれないし、
    エマみたいに心の奥を暴いて、クールなふりをしながら、
    心のこもったお説教して、正してあげることもできない。

    でもね。わたしに、たったひとつ、できることがあるよ。
    それは、唯音を信じること。

    唯音の心の隅にある悲しい塊を、痛くて苦しい過去を包んで、
    ちょっとずつ、明るい方へ手を引くこと。

    悪いところだってぜんぶぜんぶ受け止めて、
    全身全霊で、唯音を愛すること。

    この先なにがあっても、ぜったいぜったい、
    一生唯音の味方だよって誓うこと。


    だったら、もう、なにもかも、不安になる必要なんてない。


    だって…、

    “笑顔は、愛は、最強だ”って、
              ぜったいに証明するって、約束したから―!!





    わたし達は、これから、を歩いてゆく。
    朝顔の世界は復興しようとしているけど、もう元通りじゃない。

    でも、だからこそ、新しい未来を―
    ―まだ見ぬこれからを―わたし達は紡いでゆく。
    紡いで進んで、羽ばたいて飛翔して―その先を、見届ける。

    唯音が生きた理由を知ったように、
    エマが生きる理由をみつけたように、

    烈火がほんとうの自分をみつけたように、
    永遠音ちゃんが、ほんとうの家族にたどり着いたように。

    わたし達は、未来へと歩いてゆく。

    ヴィオロンが笑い、ハルピィアさんが眉をひそめ、リリカさんが微笑み、
    酩酊博士が、手招きをする、その世界を…わたしは、奏でてゆく。


    夏芽楽団交響曲。
    わたし達の無敵の音楽(しあわせ)に、たどり着くために。




    終‐fin.‐
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